主力株売却-得た学びと今後の方針-
主力株アプライド(3020)売却
先週中頃、自分のポートフォリオを支えてきたアプライド株式会社(3020)をついに売却した。
1,920円で100株、2,065円で200株を購入し、一時は資産が半減する事態に陥ったものの、そこから驚異的な上昇を続け、6月中頃には6,800円まで到達。
そこからは下降トレンドに入り、4,900円で200株を売却、続いて4,625円で100株を売却した。
結果をまとめると、下記のように+138.4%という成果になった。
取得単価:605,000円 → 譲渡単価:1,442,500円
この成果自体は良かったと思う反面、再現性があるかどうかと問われると、正直再現性は高くないと言わざるを得ない。
そこで今回は、再現性を如何にして高めるかについて、今回得た学びと今後自分はどのように行動していくべきかを言語化してみる。
前回のブログと重複する部分はあるが、自分の中で一段考えを深められたように感じているので、再度ブログに書き起こすこととした。
syokaturyoukoumei.hatenablog.com
得た学び
上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。
「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。」
この言葉は最近読んだ本の中で紹介されていたもので、村上世彰氏の父である村上勇氏の言葉であるという。
この言葉に出会った時、自分の1年間の経験、そしてそこから得た教訓が凝縮されているように感じた。
先述のブログでもこの言葉に近いこと、自分の言葉に換言すると「上昇トレンドに乗り続ける重要性、下降トレンドには逆らわない重要性」をそれぞれ教訓として記した。
そして、今回アプライドの売却を経て、改めてこの教訓の大切さを感じることができた。
これについて、チャートを見ながら振り返ってみる。
上昇トレンドに乗り続ける
上昇トレンドに乗り続けるのは難しいことだと思う。
なぜなら、「この辺が山ではないか?「PER的にはそろそろピークか?」などと考えてしまうためだ。
実際、自分も上記のように考えて保有株式を売却した後、そこからその株の株価が30%程も伸ばして、結果的に更なる利益を取り損ねたという苦い経験がある。
今回はそうした経験をもとに、上昇トレンドが続く間は持ち続けることを意識し、途中で売りたくなるタイミングを乗り越えて大きな利益を得ることができたのだ。
下降トレンドに逆らわない
前回ブログ執筆時はアプライドを保有している最中であり、この教訓を実践する機会を得られていなかった。
しかし幸か不幸か、ブログ執筆の直後から株価は下落を始め、「下降トレンドには逆らわない」という教訓を実践することになってしまった。
下降トレンドに逆らわない、それを実践するにはどうすれば良いかについて、以前自分の中では、あるルールに則って機械的な売却を行うとした。
それが上記チャートに見る「移動平均線を割り込んだタイミングで売る」というものであり、今回は5,000円弱で売却を実行した。
売却後、株価は3,000円後半まで下がり、7/2時点では4,500円前後をうろついている。
今後、株価が売却した値段まで回復する可能性もあるし、それを上回る可能性もある。
だが、個人的には今回の判断は間違っていなかったと思う。(判断のタイミングには改善の余地が大いにあると思うが)
それは、今後の株価の動きは分からないからである。
株価は戻るだろうと考えて保有し続けた結果、下落トレンドが続き含み益がなくなる可能性も十分にある。
そういった可能性がある以上、下落トレンドになれば売却するし、仮に株価が反発して上昇トレンドになったとしたら、それはそれで再度買いなおせば良い。
何も今後下落し続けるかもしれないというリスクを自分のポートフォリオの中に抱えなくても良いはずだ。
5,000円で売却して5,500円で買い直すのは少し悔しいが、その差分はリスクを回避した結果の必要分だと割り切ろう。
ファンダメンタル+テクニカル投資法
・良い銘柄の選定
・適切なタイミングでの売買
この2点を両立させるのが重要だと気づいた。
どちらか片方だけでは不十分である。(数十年スパンでの投資は別だろうが)
例えば、いくら良い銘柄を選定する能力があったとしても、アプライドに6,000円台で参入していたら、今は含み損だ。
適切なタイミングでの売買をする能力のみに長けていても、それはトレーダーとしての素質に近いだろう。
自分は本業を抱えているため、日中の売買は難しいし、一方でまだまだ少ない元手を数十年スパンで一つの銘柄に投資するというのはあまり効率が良いとは言えないと思う。
このように自分が置かれている状況を鑑みると、あくまで自分の場合ではあるが、上記の2項目が非常に大切になってくるだろう。
これまで自分は、ファンダメンタルとテクニカルは相反する概念だと思っていた。
しかし、ファンダメンタルで良い銘柄を選定しつつ、売買規則はテクニカルを基準に行うというスタイルが、自分にとっては良いスタイルなのかもしれないと今は思っている。
IRをベースに今後どれくらい株価上昇の余地があるかを分析して、その余地が大きいと想定されるところを投資先とする。
そして、売買のタイミングはテクニカルも利用することで、仮に上記の分析が外れた場合でも損失を最小限に抑制でき、分析が良い意味で外れた場合(想定以上に上がっている場合)には利益を最大化できる。
自身の分析力を絶対のものと見なさず、株価のトレンドに従うことで、市場からの撤退を防ぎ、コツコツと利益を積み重ねられるのではないだろうか。
今後の方針
最後に今後の方針についてだが、これは至ってシンプルである。
それは、ファンダメンタルとテクニカルのどちらに関しても、知識を増やし経験を積むということだ。
ファンダメンタル
現状の財務分析や割安さの判断などは、この1年間で大きく成長できたと思う。
投資歴が10年に近い友人と同じ銘柄を四季報から見つけられるようになってきているのも、自分の中では一つ嬉しい出来事だった。
一方で、株価というのは将来を織り込んで変動していくものである。
現在の自分の実力が及ぶ範囲は、現状分析のみに留まっており、将来の分析・予想という点に関してはまだまだ知識経験ともに大きく不足している。
これに関しては一朝一夕で身につくものでもないので、長いスパンで下記の内容を実施していく。
・四季報で注目した銘柄を継続して観察。株価の変動があった場合はその理由を分析。
・WBSや日経を定期的にチェック。時流や将来の見通しなどを把握できるように。
・ファンダメンタル分析に関する本を読む。業績予想など自分でも立てられるように。
テクニカル
上述のように、自分は今回のアプライド売却という判断は間違っていないとは思っている。
だが、どのタイミングで売るのが良かったのか、仮に再度参入するとしたらどのタイミングなのかなど、機械的に売買すると言いつつも感覚で判断していることが多い。
アプライド売却後に読んだ本では、ボラティリティ・ブレイクアウトやATRなど、今後にも活かせそうな考え方や指標が載っていた。
こうした知識を積極的に身につけていきたい。
これまでテクニカルを勉強していなかった分、テクニカルに関する知識は不足しているので、本を読み知識を増やしていく。
また、折角友人とトレダビという投資シミュレーションゲームをやっているので、売買のタイミングをこれで練習してみたい。
最後に
自分の投資スタイルで利益を安定して出せるようになるには、ファンダメンタル・テクニカルの二軸での成長が不可欠である。
どちらかに偏ることなく、車の両輪だということを忘れずに日々勉強していく。
また、アプライドの売買を通じて非常に多くの学びを得ることができた。
やはり実践に勝るものはないと思うので、失敗を恐れずに(もちろんリスク管理を行った上で)挑戦していきたい。
一度の売買でこれだけの学びを得たのだから、これからもっと成長できるはずだ。
株式投資1年目を振り返って
株式投資を始めたのは2019年3月20日、あっという間に1年も経った。
初めは390,000円からスタート。
その後何度か資金追加を行い、現状の結果としては以下のようになった。(6月18日時点)
累計入金額:836,000円
現在の保有資産(含み益ベース):1,914,000円(+128.94%)
1年と少しでこれだけ資産を増やすことができたのは、個人的には結構良い成果なのではないかと思う。
ただ、よく見える結果の中にも、大きな失敗はたくさんあったし(もちろん成功と言える部分もある)、そこから様々な学びも得てきた。
本稿では、株式投資を始めてから現在に至るまでの取引履歴とそこから得た教訓を記していこうと思う。
取引履歴
エン・ジャパン株式会社(4849)
約定単価:3,225円
譲渡単価:4,015円
保有株式数:100株
決済損益:79,000円(+24.50%)
タキロンシーアイ株式会社(4215)
約定単価:612円
譲渡単価:666円
保有株式数:100株
決済損益:5,400円(+8.82%)
シェアリングテクノロジー株式会社(3989)
約定単価:1,340円(100株) 690円(200株) 640円(100株)
譲渡単価:389円
保有株式数:400株
決済損益:-180,400円(-53.69%)
株式会社ビーネックスグループ(2154)
約定単価:1,625円(200株) 1,260円(100株)
譲渡単価:968円
保有株式数:300株
決済損益:-160,600円(-35.61%)
SBテクノロジー株式会社(4726)
約定単価:1,970円(100株)
譲渡単価:2,200円
保有株式数:100株
決済損益:+23,000円(+11.68%)
アプライド株式会社(3020) ※保有中
約定単価:1,920円(100株) 2,065円(200株)
現在単価(6/18時点):6,380円
保有株式数:300株
評価損益:+1,309,000円(+216.36%)
教訓
① 下降トレンドに逆らわない
この1年間で「下降トレンドに逆らったことで、大きな損失を出す」という経験をした。
自分の言う下降トレンドに逆らうというのは、下記の2パターンがある。
・下降トレンドになっても保有し続ける
・下降トレンドの銘柄を購入する
本章では、上記2パターンの失敗と、そこから得た学びを記していく。
①-1 下降トレンドになっても保有し続ける-株価下落の理由を考える-
・株式会社ビーネックスグループ(2154)の場合
元々この会社を選んだのは、業績が良く安定して成長しており、そういった中でのPER18.5倍はまだ上げ余地があるのではないかと考えたためである。
しかし、その思惑は外れて株価は緩やかな下落を続ける。
2020年2月頃には、新型コロナウイルスのあおりを受けて株価は1,000円を割り、ここで流石に我慢できず968円で売却した。
-35%という惨憺たる成果だった。
ここでの一番の反省は、「下げている理由をあまり考えずに、ただ現状の数値から割安と判断し、保有し続けた」ということである。
実際、株価が下がっていたとしても、「さらにPERが下がって割安になっている、いつか適正に評価されるようになったら株価も上がるだろう」と思っていた。
これについて、予想のPERについて考えてみたい。
例えば、株価1,000円でEPSが100円、PERが10倍の企業があるとする。
この企業の株価が500円になったとして、安直に計算するとPER5倍で割安になっているように見える。
しかし、来期のEPSが50円になることが織り込まれているとしたらどうだろう?
来期の業績悪化を見込んでいる人からすると、株価500円/EPS50円=PER10倍となり、株価500円というのは平均的な値だというように判断できる。
一方で、現状発表されている数値のみで分析する人からすると、上記のようにPER5倍の非常に割安で上がり幅のある銘柄に映るかもしれないのだ。
ちなみにビーネックスグループは、新型コロナウイルスの影響もあり、予想EPSを大きく下げ、結果的にPERは下グラフのように推移している。
目前の株価と発表されている数字(時に2,3ヶ月遅れになることもある) だけで判断するのではなく、株価が下がっている場合は「なぜ下がっているのだろうか?」「自分が割安だと思っているのに、株価が下落しているのはなぜか?」といったように、株価下落について理由を考えることが非常に大切だと学んだ。
予想修正されるEPSがPERに反映されるにはラグが生じるのである。
このように、保有銘柄が下降トレンドになった場合、安易に「割安になっているだけ、いずれ上がるだろう」と判断するのではなく、その理由を考えて時には撤退することも必要であると言えるだろう。
①-2 下降トレンドの銘柄を購入する-落ちてくるナイフは掴むな-
これは、下降トレンドの銘柄に手を出して大火傷したケースである。
初めに1,340円で100株購入したのだが、ここから株価は下落を続ける。
ますます割安になっているぞとばかりに、690円(200株)と640円(100株)でそれぞれ買い増しをしたのだが、これが大失敗。
初めの100株だけだったらまだ良かったものの、追加購入した300株で更なる損失を被ってしまった。
まさしく下降トレンドの理由を考えず(①-1)、尚且つ落ちてくるナイフを掴もうとして起こった悲劇である。
①-1のように、下降トレンドにはそれなりの理由があることが多い。
そこで下降トレンドをざっくり場合分けすると、下記のようになると思う。
A:下降トレンド(業績悪化の見込みあり/下落理由あり)
B:下降トレンド(業績悪化の見込みなし)
自分の興味のある銘柄が、Bなら買いでAなら売りという判断をすれば良い訳だが、その判断は非常に難しく、不確実性が大きい。(少なくとも今の自分の知識・経験では)
だったら、どうすれば良いのか?
それを考えた時に、シンプルに「下降トレンドの銘柄には手を出さない」という解に辿り着いた。
現状自分の実力では、上記のA・Bを自信を持って区分することが不可能に近い。
だったら、最初から下降トレンドの銘柄には手を出さないでおこうということである。
大きな損失を抱えないようにするためにも、「下降トレンドの銘柄には手を出さない、もちろんナンピン買いもしない」というのを、一旦の自分ルールにしている。
①-3 今後の方針-機械的に損切りを行う-
下降トレンドに逆らわないことの重要性は肌で感じてきたが、 では具体的にどのような場合にどのような行動を取れば良いのだろうか?
初めから下降トレンドの場合は、①-2のように初めから手を出さないというのが最もシンプルで有力なアプローチだ。
一方で、現在保有している銘柄が下降トレンドになった際のアプローチは非常に難しい。
というのも今の自分の実力では、株価下落の理由を突き止めること、想定されるEPS・PERをもとに適正な株価の落とし所を探ること、このどちらもが非常に難解なためだ。
(株価下落の要因を探る姿勢はとても大切にしたいが、全部が全部理解できるものではない)
そこで一旦は、移動平均線を割り込んだら売却というある種機械的なルールで損切りを行っていこうと考えている。
このルールを設けてから、対象となるようなケースが生じていないため、果たして有効なルールかどうか分からない。
また、1円でも割り込んだら売るのか?それとも少し幅を持たせておくのか?など、実際やってみないと分からないことも多々ある。
このように不確かなことが多いものの、まずは下記のような条件でやっていこうと思う。
・過去、移動平均線をどれくらい割り込んだ場合に、明確に下降トレンドへと移行しているかの数値を把握する
・その数値を現在の株価・移動平均線に当てはめ、逆指値をセットする
何度も言うが有効なルールかはまだ不透明であるが、本章で紹介した2社の失敗例のような大きな損失を防ぐために、機械的な判断というのを今後実行していく。
② 上昇トレンドを享受する
②-1 安易に上昇トレンド中に利確しない
・エン・ジャパン株式会社(4849)の場合
高い成長性、その割に類似企業と比較してPERが低く上昇幅があると見込んで購入したのが、エン・ジャパン株式会社である。
2019年3月20日に3,225円で参入し、その後4,015円で売却した。
その後、株価は4,000円台後半まで到達。
少し下落はしたものの、結局5,000円以上の値をつけるまでに上昇し、上昇トレンドを享受しきれないまま売却した格好となった。
ここでの学びは、前章と重複するが「トレンドの強さ」である。
下降トレンドについては、安易に手を出さないこと、機械的に損切りすることが重要だと体感した。
一方、上昇トレンドはその逆で、しっかりと保有し続けることが利益の最大化のために非常に大切だと学んだ。
「PERを考えると、これくらいの株価が適正か?」というように考えるのはもちろんだが、それと同時に、上昇トレンドに逆らわず握力強く保有し続けるのも一つの手段ではないだろうか。
・アプライド株式会社(3020)の場合
エン・ジャパンでの学びを活かせたケースが、こちらのアプライド株式会社だ。
この企業は、株価購入当時PER5倍という超割安さに成長性も有しており、さらにROE20%越えと経営効率も非常に良かった。
また、単なる小売業態のみではなく、大学向けなどB to B の分野の強化、AI関連の事業内容などの要素もあり、明らかに割安と判断し1,920円で購入した。
途中、新型コロナウイルスの影響もあり株価は1,100円程まで下落するも、その後急騰。
現状、6,000円を超える値をつけており、購入時の3倍以上に上昇している。
実はこの銘柄に関して、ここまで急に値上がりすることに不安を感じ、「○%くらい上がったら売ろうか」「PER○倍になったら利確しようか」と考えていた。
ただ、ここでエン・ジャパンの例を思い出し、上昇トレンドの内は持てるところまで持ってみようという判断を下した。
この判断は結果的には正となり、3バガーを達成。非常に大きな利益を出すことに成功している。
このように上昇トレンドの恩恵を享受するためには、上昇トレンドの最中は握力強く保有し続けることが重要であると言えるだろう。
②-2 いかに早いタイミング(割安なタイミング)で参戦できるか
上昇トレンドの恩恵を享受するためには、②-1のようにしっかりと保有し続けるということはもちろん大切である。
だが、それ以上に重要だと考えているのが「いかに早いタイミングで参戦できるか」ということである。
これは、エン・ジャパンのチャートである。
先ほど上昇トレンドに乗り続ける大切さは説明したが、例えば4,000円(2019年6月)で参戦するのと、5,000円(2019年11月)で参戦するのを比較するといかがだろう?
当たり前ではあるが、参戦するのが遅いほど(この場合5,000円での購入)得られる利益の幅は小さくなる。
さらに上昇トレンドが崩れ大きく下落した場合を考えてみると、4,000円で購入していた人は少しプラス、最低でもプラマイ0くらいの成果になる可能性がある。
一方で、5,000円で購入していた人にとっては、素早く売却したとしても購入時よりもマイナスとなる可能性を多分に秘めているのだ。
このように、
・得られる利益の幅が小さくなる可能性がある
・トレンドが転換した際に、損失を被る可能性がある
といった理由から、いかに早く参戦するかが非常に重要なのだと思う。
新規銘柄を選別する際、「上昇トレンドだからGO」ではなく、それと同時に各種指標から鑑みて「この上昇トレンドはどこまで続く余地がありそうか」も併せて考察する必要があると言えるだろう。
そして、一早く上昇トレンドに参戦するためにも下記のアクションを継続的に行う。
・会社四季報による投資候補先選定
→業績・財務共に良好だが、人気がなく放置されているような銘柄
→業績・財務共に良好で注目され始めているが、上昇余地が大きく残されている銘柄
→何らかのテーマが乗っかる可能性のある銘柄(テレワーク、AIなど)
・上記銘柄をまとめてリスト作成
→投資先となる可能性のある銘柄の値動きを日々チェック
→特にコロナショックの後の急騰のようなタイミングは見逃さない
地道な活動ではあるが、利益を最大化するためにはこうした日々の積み重ねが欠かせない。
③ 株式投資における考え方
ここまでは、具体的な戦術に関する教訓を記してきた。
この章ではそれらを踏まえて、株式投資で利益を出すために大切だと感じた考え方の部分について説明したい。
③-1 彼れを知りて己れを知れば、百戦して殆うからず
孫子の有名な言葉に以下の言葉がある。
「彼れを知りて己れを知れば、百戦して殆うからず。彼れを知らずして己れを知れば、一勝一負す。彼れを知らず己れを知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。」
敵と自分の両方の実情を知っていれば、百度戦っても危険がないということを意味している。
ここで、これを株式投資風に訳してみると、
「相場を知っていて自分の実力も知っている人は、百度戦っても危険がない。自分の実力は知っているが相場を知らない人は勝ったり負けたりする。相場も自分の実力も知らない人は、戦うたびに危険に晒される」
となる。
つまり、株式投資で安定して利益を出すためには、この2点が非常に重要なのである。
1. 自分の投資先や相場に対して、十分なまでに理解を深めること
2. 自分の力量をしっかりと把握すること
1に関して、十分な理解を得ないままに意思決定し、失敗したのがシェアリングテクノロジー株式会社である。
当時儲けに飢えていた自分は、営業CFが赤字であることや、営業利益がテクニカルな形で計上されていることには全く気づかずに、ぱっと見の成長性に騙されてこの銘柄を購入した。
その結果が−50%超の損失である。
「何となく成長している」「何となく上がりそう」というレベルで意思決定することがあってはならず、なぜこの銘柄を選択したかをはっきりと説明できるまで調査・分析する。
ここまでやって初めて、株式投資で利益を出す土台に上がれるのだろう。
2に関して、株価の動きよりも自分の実力を過信して失敗したのが、株式会社ビーネックスグループである。
こちらは前述のように、株価が下がり続けても「株価が間違っているのであって、自分の判断は間違っていない」というスタンスを取り続け、結局は大幅に下落したタイミングで損切りする羽目になっている。
もちろん、今後は徹底的に分析した上で投資先の選定を行う。
だが、それはあくまで現状の自分の実力の範囲内での分析に過ぎず、それが適切でない可能性も十分にあると考えられる。
もし選定した銘柄が下落したとしたら、過去の判断に囚われ過ぎず、現状の自分の力量を見つめ直し、素直に株価に従うということも重要な要素かもしれない。
③-2 勝つときは大きく、負けるときは小さく
アプライド株式会社を購入する前の投資成績は以下のようである。
・エン・ジャパン株式会社(4849) 決済損益:79,000円(+24.50%)
・タキロンシーアイ株式会社(4215) 決済損益:5,400円(+8.82%)
・シェアリングテクノロジー株式会社(3989) 決済損益:-180,400円(-53.69%)
・株式会社ビーネックスグループ(2154) 決済損益:-160,600円(-35.61%)
・SBテクノロジー株式会社(4726) 決済損益:+23,000円(+11.68%)
5名柄中、3銘柄で利益を出すことに成功しているが、決済損益の合計で見ると-233,600円と大幅に負け越している。
当たり前だが、株式投資は利確した銘柄の数を競うゲームではなく、最終的な利益を如何にして最大化するかというものである。
そういった意味では、上記の自分の投資スタイル「小さく勝って大きく負ける」は最も悪い手だと言えるだろう。
では株式投資で勝つためにはどうすれば良いか?
それは、全く逆の「大きく勝って小さく負ける」というスタイルではないだろうか。
現実的には「百戦殆うからず」とまではいかず、負けることも度々ある。
大切なのは、その負けを「小さく止めるのか」、それとも「傷口を広げてしまうのか」、このどちらとするかである。
そして勝つときは、利益の最大化を目指す。
これらはまさしく、ここまで述べてきた「下降トレンドに逆らわない」「上昇トレンドを享受する」そのものではないか。
如何にして勝ちを大きくし、如何にして負けを小さくするか。
この目標を達成するためにも、ここまで学んできた教訓を活かし、さらに経験を積んでアップデートしていく必要があるだろう。
おわりに
この1年間、株式投資で利益を出すことができたのは、ほとんどがアプライド株式会社によるものである。
テレワーク需要増加というテーマが偶然降りかかったのも株価急騰の要因であり、自分でもここまで株価が上がるとは想定していなかった。
そのため、今回の成功は決して自分の実力のみによるものではない、ということを受け止めておく必要があるだろう。
一方で、そもそもこの銘柄を割安な段階で見つけ出すことができたこと、上昇トレンドを享受し大きな利益を得たことは、自分がこの1年間の株式投資の経験から得た学びを活かせたと言っても良いと思う。
今回の成果を過信せず、一方で経験から得た学びを実践できたことには自信を持って、今後の株式投資に取り組んでいきたい。
『スターリンの葬送狂騒曲』に見る後継者争い
『スターリンの葬送狂騒曲』
2017年公開の『スターリンの葬送狂騒曲』という映画を見たのだが、非常に面白かった。
この映画ではソ連の絶対的権力者ヨシフ・スターリン(1878-1953)が急死した後の、後継者争いの様子をフィクションを交えながら描いている。
騙し合い、裏切り合い、そして時には打算のもとに手を組む。
自分が権力を握るためには手段を選ばない非道な姿を見て、これこそが権力争いだと心踊る。
劇中では、スターリン批判で有名なニキータ・フルシチョフ(1894-1971)も中心的存在として登場しており、世界史を少しでも知っている人なら割と楽しめる政治風刺的な作品だと思う。
少し話は逸れるが、この作品を見て感じたのが、権力者の後の後継者争いは強烈な権力闘争を招き、大きな混乱を巻き起こすというのは、古今東西普遍的な事象であるということだ。
日本と世界の後継者争い
後漢(25-220)末期の袁紹(?-202)は後継者選びで過ちを犯したとされる一人だ。
彼は明確な後継者を指名せずに死亡したことで、長男の袁譚と末子の袁尚による泥沼の争いを招くことになる。
武官・文官たちもそれぞれが、袁譚派・袁尚派に属することで国は大きく分裂。
その隙を曹操(155-220)に狙われ、袁紹の全盛期には中華一を誇った程の勢力もあっという間に瓦解し、袁紹死後のわずか5年後に袁氏は滅亡の憂き目を見ている。
日本では織田信長(1534-1582)死後の清洲会議が有名だろう。
戦国のカリスマ織田信長は明智光秀に本能寺で討ち取られ、その後、例に漏れず後継者争いが勃発する。
大きな発言力を有していた羽柴秀吉(1537-1598)と、その台頭を防ごうとする柴田勝家(1522-1583)は対立。
こうした状況下で信長の正式な後継者を定めようと開かれたのが清洲会議である。
結果としては、秀吉に軍配が上がったものの、両者は対立を深め織田勢力を二分するほどに発展した。
最終的には、秀吉が賤ヶ岳の戦いの戦いで勝家を破り信長死後の混乱を抑え、天下の覇者として名乗りを挙げていくことにになる。
このように権力者の後の後継者争い、中でも後継者が指名されないケースは、非常に悲惨な権力闘争を引き起こす。(※清洲会議に関しては、信長が後継者を指名していたという説もあるが)
だが、後継者を指名していたら良いかというと、それはそれで反対派閥との権力闘争を招く可能性も十分ある。
このように非常に難解な後継者問題だが、混乱を回避するための有効な手段として清(1616-1912)の太子密建が思い浮かんだ。
太子密建とは?
太子密建とは、清代に用いられた後継者指名の方法である。
皇帝が生前に公式に後継者を指名せず、継承者の名前を書いた勅書を印で封印した後で紫禁城の乾清宮の正面に掲げられた「正大光明」と書かれた額の裏に置き、皇帝の崩御後、衆人立会いの下でこれを開き後継者を決めるという方式である。皇帝は公開されない後継者を何度も変更することが可能であった。
(引用:wikipedia)
この方法を用いることで、皇帝は派閥に関係なく優秀な人物を後継に据えることができるし、また誰が後継者候補かも明示されていない以上、派閥争いというものが起きない。
実際、清朝では暗愚な皇帝が他王朝と比して少なかったと言われており、この制度には一定の効果があったのだろう。
現実的ではないが、次期内閣総理大臣を決めるのに太子密建を採用するのも面白いかもしれない。
無用な派閥争いが生まれにくく、また後継者と目される人たちも我こそが後継者だと努力するので、政治的にはプラスの要素があるように思える。
一方で、現内閣総理大臣が後継者の決定権を有するということで絶大な権力を手にすることになり、権力が暴走する危険性もあるので一概に良いとは言えないのか……?
既に絶大な権力を有している人物、例えば大企業の創業者、独裁国家のトップなどにとっては、優秀な後継を選択することで更なる繁栄を享受し、尚且つ後継決定権を有することで自分の権力を強化できる、この二つの意味で非常に有益な制度になりそうだ。
現代の後継者争い
ここまで後継者争いの歴史やその解決案を見てきたが、最後に現代の後継者争いについて見ていきたい。
ここで注視したいのは、習近平(1953-)とウラジーミル・プーチン(1952-)である。
両名とも、後継者は自分自身とも言われるほど、盤石な基盤を築き上げ、また権力の座から降りる気配を見せない。
後継者の候補に関しても、習近平については陳敏爾(1960-)などが一応の候補とされているが、プーチンに関しては調べたところ明確な候補とされている人物は今のところいなさそうだ。
ただ、表に出ていないだけで水面下でポスト習近平、ポストプーチンの内部闘争は進行していると考えるのが普通だろう。
それが表面化するのはいつか?
両名とも70歳に近く、これからは特に健康リスクがついてまわる。
もしものことがあった場合は、これまでの水面下の闘争が一気に表面化し、「後継者争い」として大きな混乱を招くだろう。
任期ベースで物事を捉える必要性のある一般的な民主主義国家と異なり、中国やロシアはより大局的な目線で国家を運営できることが強みである。
しかし、一方で後継者争いが勃発すれば、それは一般的な民主主義国家では想定し得ない程の混乱を招く可能性を多分に秘めている。
今後の世界のパワーバランスの変化を読み解いていくためには、習近平・プーチンの後継者について目を離せない。
人民日報に見る中国の対米姿勢-歴史的観点からの考察-
米中対立と中国の強硬姿勢
中国と米国の対立が新型コロナウイルスを機に過熱化している。
米国のトランプ大統領は自身の責任を回避すべく、また中国へ打撃を与えるべく、「感染拡大を公表せず、世界に多大なる死者を及ぼした敵国」として中国を猛烈に批判しており、その対立は深まるばかりだ。
一方の中国も、米国のことを公然と批判している訳だが、そのことは中共中央の機関紙である『人民日報』から伺うことができる。
以下、特徴的な箇所を人民日報から引用する。
わずか8週間で、米国の新型コロナウイルス感染による死者数は米軍のベトナム戦争での死者数の総和を上回った。政府の対応が不十分だったために生じた人道主義上の危機により、米国では悲劇が次々と繰り広げられて
いる。
にもかかわらず、米国の政治屋たちは今、何をしているのだろうか?「つらくて夜も眠れない」トランプ大統領は、キャンプデービッドに週末を過ごしに行った。ポンペオ国務長官は、新型コロナウイルスの発生源が武漢ウイルス研究所だと証明する「大量の証拠」があると声を限りにわめきたてているが、何の証拠も示せていない。
中国の感染症対策措置は効果をあげており、目覚ましい成果をあげ、貢献も極めて大きかった。この点について、国際社会の理性的な声は異論を唱えていない。米国の一部の政治屋が中国を非難するのは、典型的な病的心理状態によるものだと言えるだろう。
このような病的な心理状態はどこから来るのだろうか?
(中略)
残念なことに、こうした政治屋の卑劣なパフォーマンスに、少なくない米国国民があざむかれてしまっている。しかしよく考えてみれば、公共リソースをその手に握り、下心をもって世論を操作し、良心に背いて民衆を煽り立て、自分だけの利益のために米国国民の善良さを利用することは、彼らが伝統的に行ってきたことなのである。
このように『人民日報』では、中国の感染症対策が成果を挙げていること、一方で米国が多大なる犠牲を被っていること、そしてその犠牲を中国に転嫁しようと政治的パフォーマンスを行っているのだということ、を明確に論じている。
『人民日報』は中共中央の機関紙であり、つまりこれは中共中央が公的に米国の姿勢を批判していることを意味している。
ところで、中国がこのように直接的に、そして苛烈に外国を批判するのに思い当たる事例が2つある。
一つは、フルシチョフのスターリン批判に端を発する中ソ対立、もう一つは、チベットの独立運動に端を発する中印対立だ。
中ソ対立に関する考察は『東洋経済』にも一部記述があったので、本記事では中印対立を参考にして、現在の米中関係を考察していこう。
中印対立と『人民日報』
中国とインドは1962年に国境を巡って武力衝突するに至るのだが、元々外交上は協調関係にあった。1954年に中国の周恩来首相とインドのネール首相 が「平和五原則」を提起したように、東西どちらにも属さない第三世界として一定の協力を必要としたためだ。
しかし、こうした協調関係はある重要な事件を機に終焉を迎える。
それが1959年3月10日に勃発した中共中央・チベット間での紛争、そして同年3月17日に起きたチベット法王ダライ・ラマ14世のインド亡命だ。
これがなぜ重要な出来事なのだろうか?
それは、チベット問題が中共中央の内政問題から外交問題にまで発展したことに起因する。
そもそも、中国とチベットの間には対立は度々見られていた。ただ、中共中央からすると、それはあくまで国内でのいざこざであり、中国の内政問題であった。
だが、ダライ・ラマが亡命しインド政府がそれを保護したことで、事態は一変する。なぜなら、内政問題だったはずのチベット問題が、インドとの外交問題の間に定義されるに至ったためだ。
こうした状況下で、『人民日報』ではインド、とりわけネールに対する批判が苛烈さを極める。
チベットの少数の売国奴がひきおこした反乱戦争はほぼ平定された。反乱分子の引きおこした流血の衝突は、かれらの恥ずべき失敗にともない、チベットの大部分の土地で平定された。
(中略)
かれは(引用者注:ネールを指す)この社会のきわめて残酷な搾取制度にふれなかつたのみならず、実際には、圧倒的大多数の被搾取者とごく少数の搾取者とを同一に論じ、さらに、その上に立つて、チベットの反乱が少数の上層反動分子の責任であることを否定し、中国人民が反乱を平定した正義の行動を「悲劇」などといい、反乱に同情を示している。このように、かれは、きわめて悲しみ惜むべき誤りを犯している
『人民日報』「チベット革命とネールの哲学」
中共中央は、自身のチベット統治のあり方を賞賛する一方で、この時点で敵国に近しい存在と相成ったインドのことをはっきりと非難しているのだ。
このように中国は何か大きな事件があった際に、
・その際の政府の行動が正しかったと示すため
・それに伴う内政問題への干渉を断固として拒否するため
には、相手国の誤りを明確に指摘し、政治的姿勢を痛烈に非難するのである。
これは、現在の米中関係に関しても全く同じことが言えるのではないか。
『人民日報』に見る中国の対米姿勢硬化の要因
現在の中国の対米姿勢の硬化、見解の先鋭化を見るに、その主たる原因は先に示した「1. 政府の正統性の担保」「2. 内政干渉の排除」だと思われる。
前者に関しては、小康社会の実現を目指し貧困撲滅を掲げる習近平にとって、新型コロナウイルスによる未曾有の混乱、経済成長への大打撃が非常に大きな痛手となったことは想像に難くない。
こうした状況下で、政権が不安定化するのを抑制するためにも、また習政権の威光を維持するためにも、政府の採った方策が正しいということは明確に示さなければならない。
後者に関しては、台湾のWHO参加を巡る米中の対立、米国による台湾への魚雷の売却など、中国にとっては看過できない事態となっている。
それは、中国とチベットとの関係性と同じく、中国にとっては台湾問題もただの内政問題であり、対外的な干渉は認められないためである。
このように中国にとっての「内政干渉」が行われ続ける限り、見解の先鋭化は止まないのではないだろうか。
おわりに
ここまで『人民日報』をもとに、中国の基本的な考え方を考察してきたが、一体今後の米中関係はどのような動きを見せるのだろうか。
一点、『人民日報』を通じたインド批判を強めた3年後の1962年、中印国境付近で武力衝突が発生したということは頭に留めておく必要がある。
『人民日報』での米国批判をここまで強めているということから、武力衝突とまではいかないまでも、これまでにない規模での対立が起こることは十分に想定される。
米国のコロナ動向、経済の回復状況が芳しくなく、中国への攻撃が止まない場合、中国は正統性の担保と内政干渉の排除のために、しばらく矛を収めることはなさそうだ。